北海道もシロアリ注意
北海道もシロアリ注意
“いない”という思い込みは禁物
現在の生息北限は道北・名寄
「道内にはシロアリがいないと思い込んでいる人が多く、被害にあって初めてシロアリに気付く人がほとんど。シロアリとわかっても駆除にお金をかけたくないので、そのまま放置してしまう人もいる」。
こう話すのは、害虫防除や木材防腐工事等を手がける㈱青山プリザーブ(本社札幌市)の青山達哉専務。
同社ではシロアリ駆除で年間30件弱の住宅を管理しており、シロアリに関する問い合わせ・相談は札幌を中心に年間20件前後あるが、実際にシロアリの被害に遭っている住宅の絶対数はもっと多いと推測する。
それは、道民のシロアリに対する意識が低いため。本州とは違って積雪寒冷地の道内にシロアリはいないと思い込んでいる人が大多数だからだ。
しかし、実際はそうではない。道内では約100年前に現在の道南・北斗市の茂辺地で発見されており、もともと道内にもシロアリはいた。去年の9月の北海道胆振東部地震で倒壊した厚真町やむかわ町の木造建築物でも、シロアリの食害が確認されており、建物被害調査を行った関係者らが警鐘を鳴らしている。
それではもし室内にシロアリらしき生物が見つかった時、シロアリかどうかをどのように確認するのか。
道内の住宅にシロアリが出てくるのは、ゴールデンウィークから6月中旬頃で、天気が良く、気温も高い日に窓回りなどに羽根のあるアリ(羽蟻)が出たら、シロアリと疑うべき。ちなみにシロアリにもいくつか種類があるが、道内に生息しているのはヤマトシロアリで耐寒性も高いという。
羽蟻でもシロアリ以外にクロアリの可能性もあるが、①死骸がある時はアリの体から羽根が落ちている②首に黄色い線がある③羽根の長さが体長の2倍以上ある④4枚ある羽根の長さがいずれも同じ―などに該当する場合はシロアリと判断できる。
現在、生息地は道央・道南に限らない生息北限は道北の名寄で、家屋の被害が確認された北限としては同じく道北の留萌となっている。一方で道東や宗谷、日高では生息が確認されていない。道東に関しては羽のあるヤマトシロアリでも日高山脈を越えるのは難しいこと、気温が低く、雪も少ないため地温が下がりやすいことなどが、生息していない理由に挙げられる。
しかし、道東では生息ができないとされていたが、2022年10月に帯広市内でも生息が確認された。
(青山:2023.9.ペストロジー,2024.1.しろあり)
基礎断熱住宅の被害増加
駆除は毒餌使う方法が安心・確実
最近のシロアリ被害の特徴としては、基礎断熱を採用した住宅で多く見られるということがある。
青山プリザーブ・青山専務によると、過去10年間の駆除件数に占める基礎断熱住宅の割合は、2009~2013年が平均で19.2%だったのに対し、2014~2018年は同45.2%と2倍以上になっており、
2018年は新規の駆除依頼件数の10件中9件が基礎断熱。
また、床断熱の場合は新築住宅の被害がほとんどないが、基礎断熱の場合は築5年以内で被害に遭う住宅も目立つという。
シロアリは通常、布基礎表面に蟻道(ぎどう)を作って床組木材までたどり着くが、基礎断熱の住宅では蟻道を作らなくても基礎断熱材の中を食い破って床組木材までたどり着けるからだと青山専務は指摘する。
シロアリが確認された時の駆除方法としては、薬剤を使う方法と毒餌を使う方法を採用することになる。
毒餌を使う方法は、住宅の周囲3m置きに餌木を入れたステーション(採餌場)を設置し、餌木を食べたことが確認されたら毒餌に交換し巣に持ち帰らせる方法。どんな構造の建物にも適用でき、薬剤による駆除とは異なり、住まい手の健康や環境への影響もない。
駆除まで平均2年かかるが、巣ごと全滅させることができる。費用は建築面積60㎡程度の住宅で20万円強ほどになるそうだ。
まずはお客様の不安解消を
道内にもシロアリが生息しているのであれば、事前に被害を防ぐ対策はないのか。
まず考えられるのは、新築する前に土地を調べて生息しているかどうかを確認することだが、それは現状では不可能だという。そうなるとシロアリが出た時に被害を受けないようにするためには、①基礎断熱材の一部をカットして鉄板を水平に回し、シロアリが床組木材まで掘り進むのを物理的に止める②防蟻性のある基礎断熱材を使う③新築直後に毒餌を使い、シロアリがいたとしても出てくる前に駆除する―などに限られる。このほかにも床断熱を採用して防蟻処理を行うという手もあるが、シロアリが布基礎に蟻道を作って床組木材にたどり着く可能性はゼロではない。
住まい手にしてみれば、シロアリが出たというだけで精神的なショックを受ける可能性もあるだけに、住宅会社としてはシロアリが見つかった場合でも人間に害はないこと、駆除することが可能であることを説明し、お客様の不安を取り除くようにしたい。また、被害に遭った部分は保証するのかどうか、保証するとしたら築後何年までか、駆除にかかる費用は誰が負担するのかなども考えておきたい。例えば築2年以内に被害が生じたら、駆除費用は自社で負担するという住宅会社もある。